ヤクいぜ。

コード・スケールって知ってる?

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音楽の話。

いわゆるおんがくりろんの一つにコード・スケールって概念があって、数ある理論のなかでもとびきり重要な方の考え方なんだけど、例えばCメジャーキー内でのCM7はⅠ度のM7ダイアトニックコードとしてはたらくのは分かるよね。そんときコード・スケールを知ってれば、このⅠ度M7内で使える音がサッと瞬時に分かるようになる。嘘じゃないよ。Ⅰ度M7なら大体アイオニアンスケール(ドレミファソラシド)かリディアンスケール(ドレミファ♯ソラシド)になるんだけど、アイオニアンの4番目のファの音はアボイドノートつってCM7の響きを崩すから使えない。だから実際(ドレミソラシド)になって、これってリディアンスケールの部分集合だよね。だからファ♯を使ってるかどうか、でアイオニアンと呼べるかリディアンと呼べるかどうかが決まる。だから逆にジャズの楽譜とかでリディアンの指示があればこのファ♯に相当する音を必ず弾かないとリディアンじゃなくアイオニアンぽい響きになっちゃうから、奏者はその辺を意識する。みたいな感じ。

大体分かったでしょ、つまりコード・スケールってのは「コード・対・スケール」のことで、もっと言えば「それぞれのコード進行のなかでメロディとして使ってもいい音の候補をリストアップしてくれる検索エンジンみたいな感じで使うんだよね。

こうやって聞くと、コード・スケール理論って作曲に絶対必要になってくると思わない?だって、“コード進行に対応したメロディラインの候補の検索機能”って、これがないと逆にどうやってメロディ作ってんのかイミフ、って感じでしょ。

けど体感、曲を書く人間が100人いたらそのうち98人はコード・スケールなんて全く勉強してなくて、各自なんの理論にも照らし合わせずしてメロディを考えてる。どうやったらそんなことができるのかというと、早い話が既存曲のパクりなんだよね。それもちゃんとパクるんじゃなくて、メロディラインの一部を切り取ったいわゆる「リック(短いソロ)」ってやつをほうぼうから掻き集めていっしょくたに継ぎ接ぎがっちゃんこして、できあがったキメラを「オリジナル曲です!」つって自分のものにするんだよね。

この行為ってまあ、声を大にして「パクりだ!」とまでは言えなくても、少なくとも完全な創作とは呼びがたいし、そんな詰めの甘いやり方で例えば客から金をもらうとか(日本のアーティストの9割はこれ。)、他の創作人に並び立ったような顔をするとかするなら、その態度は若干腹立つ。

昔は作曲ができる環境なんてプロか大金持ちしか持てなくて、素人には誰も音楽なんて作れなかったから相対的にコード・スケールを意識したオリジナリティあるメロディを持つ楽曲が多くて、ポップチャートにもそういうのがちらほら見れたんだけど、今はDAWの台頭で誰でも簡単に曲が作れちゃうから、そういうのを買って「さあ、しんどい勉強なんにもしてないけど曲を作るぞー」って人達がまず初めにすることって既存の曲の寄せ集め継ぎ接ぎ型のパクりなんだよね。

そうなれば必然、似たようなメロディを持つ楽曲がチャートにも増えるわけで、さらに、そういう曲を聴いて育った次世代の人達がまた理論を勉強せずに流行曲をパクって曲を作るようになって、みたいな悪循環でどんどんメロディラインのパターンが萎んでいくっていう未来まで見える。

でも実際、徒然草の150段(「天下のものの上手といへども」ってやつ。)にもある通り、そういうパクりから始めていつの間にかすごい音楽を作れるようになったって人も多くいるだろうし、むろんおれもその一人だから、やっぱパクりは完全な悪ではないんだよね。どちらかというと、これがまかりとおるような環境が悪い。理論の下敷きの無いパクり曲をちゃんと理論の下敷きの無いパクり曲と見定めるだけの審美眼ってか審美耳が聴衆に備わってないから、そういうしょうもない曲が結果として世の中に多く出回っちゃうんだよね。

で、考えられる反論として例えば「そんな理詰め理詰めで曲を作って何がアートやねん、もっと感性の羽を広げて自然に作った方がむしろカッコいいんや」みたいなのがある。いわゆるアーティストがよく言う「メロディが降りてくる」ってやつだよね。ふざけんなって話だけど。確かに理屈ゴリ押しで曲を作って、それを感覚的な芸術と連絡させるのは難易度高いかもしれないけど、じゃあ逆に聞くけどその「感覚的にメロディを作る」ってやり方ってさ、結局「もう既に知ってる曲を頭の中で分解して散りばめて、そこから適当に拾ってくる」ってやり方でしかないよね。だってあなたが大天才でもない限り、完全な無から有を生み出すことはできないんだから。「感覚的に音楽を生み出そうとするかぎり、あなたがこれまでに聴いてきた音楽がどうしても影響してくるよね。それってオリジナリティって点で、どうなの?」ってことです。

あと、別にコード・スケールを習得したからって、理詰め理詰めで曲作る必要もないです。ただ、あなたのメロディラインが「何者にも揺るがない絶対的尺度であるコード・スケールに裏打ちされたものかどうか?」という問いが、あなたの音楽性のオリジナリティにとってとても大事なのです。

だから、やっぱちゃんとした創作人でありたい、パクりなんかダサい、っていう意識が少しでもあるなら、音楽やる人はコード・スケールは学んどいた方がいいよ。覚えること多くて最初はめちゃくちゃ躓くだろうけどさ。どうしても分かんなかったら連絡くれたらおれも教えれることは教えるし。はりきっていこう。